「今はほぼ閉鎖状態ですが、ちゃんと営業中です。待ち時間なしで楽しめますよ」

 ふふっと、おしとやかに笑うトーコちゃんが、黒いワンピースを揺らす。やけに背景とマッチしていて、わたしはゴクリとつばを飲み込んだ。

 場所も気になるけど、一番落ち着かない理由は──。


「みんな、お待たせ。早いね」

 おだやかな声に、ハッと振り返る。

 黒のズボンとグレーの服を着た、夜宮先輩が立っていた。初めて見る私服に、ドキッとする。学生服と違って、いつもより大人っぽく感じた。

「よりにって、なんで先輩なんだよ」

 面白くなさそうなレオを引き連れて、わたしたちはゲートをくぐり抜けた。トーコちゃんの腕に、がっちりしがみついて。

 どうして、夜宮先輩を誘ったのか、くわしいことは聞けていない。話してみたかったからって。

 トーコちゃんも、夜宮先輩のことが気になってるのかな。バスケ部を見に行こうとした時も、いつになく張り切っていた。

 先輩は、恋の契約がどうとか言っていたけど、イマイチわからないし。
 夜宮先輩を好きかもしれないってことは、まだ秘密にしておこう。もちろん、悪魔だってことも。