「わ、わかりません。だって、天使や悪魔のこと、知ったのも昨日だし」

 しどろもどろになりながら、目を泳がせる。近すぎて、目を合わせられないよ。

「そうなんだね。なにかあったら、僕を呼んで。必ず助けに行くから」
「……え?」

「お、おまえら!! こんなところで、な、何してんだよ! くっつきすぎだ!」

 バタバタと騒がしい音を立てながらレオがやって来て、わたしたちを引き離した。いつのまにか、浮かんでいた紫のマリモが消えていた。

「……や、やだ! なんでレオが?」
「私もいますよ」

 レオの後ろから、ひょこっとトーコちゃんが顔を出す。
 先輩と教室から出て行くのを見て、心配になってついて来たらしい。飛んでいたから、全く気づかなかった。

 もしかして、二人の存在に気づいて、聞こえないようにあんなことを?

 チラッと夜宮先輩の方へ視線を向ける。

「またね、リリア」

 頭をポンとなでられた拍子に、キラリと光るものが首元に見えた。

 ……えっ、なんで?

 夜宮先輩が立ち去ってからも、優しい微笑みの裏で、ぐるぐると頭の中を回っている。

 一瞬しか見えなかったけど、エメラルドグリーンのネックレスをしていた。盗まれた涙形と同じ。
 たまたま似ていただけかもしれない。

 でも、夜宮先輩は不思議なことだらけだ。ずっと前から知ってるとか、約束とか。

 ──やっぱり先輩が、わたしの宝物を盗んだ、初恋の人なの?