怖いはずなのに、なんだか胸がドキドキしている。ジェットコースターに乗ったあとと似ている気がする。

「僕が悪魔だってことは、もう知ってるよね?」

 とまどいながらも、わたしは小さくうなずいた。

「天塚家のことは、先祖代々注目しててね。まあ、敵視って言うのかな」

 話す先輩の肩に、ぽわんと何かが現れた。紫色のマリモみたいな形。真ん中に、丸い目がふたつついている。

「悪魔と天使が協定(きょうてい)を結んでいた時代もあったようだけど、今はほぼ、ないに等しい。だから、リリアに協力してほしくて」
「……わたし……ですか?」

 目を丸くすると、小さな生き物がピョコンと跳ねた。
 さっきから、気になって話に集中できないよ。

「僕と結婚してくれたら、仲違(なかたが)いしなくなるんじゃないかなぁって」
「けっ、結婚⁉︎」
「今すぐとは言わないよ。それに、まだやらなきゃならないことはたくさんあるんだ。最近……」

 思いもよらない言葉に驚いていると、屋上の壁と夜宮先輩の体に挟まれた。いわゆる壁ドンというやつをされて、身動きが取れなくなる。

 な、なにが起こってるの〜?

「最近、リリアのまわりで、妙なことが起きたりしてない? 例えば、誰かにつけられてるとか」