背中まで伸びた茶色の髪。たぬき顔を強調する、少し太めの眉。
 天塚(あまつか)リリア、明日で十三歳の誕生日を迎える中学一年生。

 また同じ夢を見た。
 最近、六歳の頃に起きた事件を夢に見ることが増えたの。

 お父さんの高い時計やお母さんの宝石には目も暮れず、ゆいいつ盗まれたのがわたしのエメラルドグリーンのペンダントだった。

「しょうもない犯人ですね〜」と警察が笑っていたのを、今でもよく覚えている。

 わたしのために警察へ通報してくれて優しいお父さんだなって思っていたけど、今思うと、ちょっぴり不思議。

 だって、子どもの言うことを間に受けて、自分たちが見てもいない泥棒を捕まえてくれなんて必死になっていたんだもん。
 しかも、盗まれたのは、オモチャのペンダントだったのに。


 小さなあくびをしながら、手のひらを口に当てる。
 夢なのに、夢じゃないみたい。あの人の優しくて甘い香りを思い出せって言われたら、今なら出来そうな気がする。

 教室の窓から外を眺めていたら、とてつもないオーラを放つブルーの瞳と目が合った。驚いて思わず声が出る。

「あの……、聞いてますか? リリちゃん」

 ぶらんぶらんと金色の髪を揺らしながら、冷たい頬がぴとりとわたしの鼻にくっついた。

「わ、わあっ! なっ、なに? ああっ、トーコちゃんの人形⁉︎」

 通学カバンへつけるにしては、少し大きめのアンティークドール。可愛らしいのだけど、暗闇では一緒にいたくない。

 だって、わたし、オバケやホラーが大の苦手。うっかり怖い動画を開いた日には、一人で寝られないほど。