リュックのたすきを握りしめながら、キョロキョロと廊下を歩く。

 念のため、黒い翼を探しているのだ。この中学校に、夜宮先輩の他にも悪魔がいるのかどうか。
 見たところ、それらしい人はいなそう。

 ドキドキしながら一年B組の教室の前まで来ると、人だかりができていた。なにごとだろう?

 不思議に思いながら女の子たちの後ろに立つと、奥でひとつだけ飛び出ている後頭部がくるりとこちらを向いた。

 夜宮先輩⁉︎

「あっ、見つけた」

 そう笑ったと思ったときには、わたしの手を引いて人の波から離れていた。

 廊下を過ぎて、階段を上る。すごいスピードで、転びそう。そのうちに、足がふわりと浮いて宙を飛んでいた。

「せ、先輩! あの、これは、一体……⁉︎」

 黒い翼が羽ばたいて、風を切っていく。すれ違う生徒たちには、見えていないみたい。まるで、本物の悪魔になったようだ。

 屋上へ出て、ストンと地に足をつける。手は繋いだまま、夜宮先輩はわたしの髪を整えてくれた。

「急にごめんね。誰にも聞かれたくない話があって」