「……うそ?」

 騒がしいから、出てきたのかと思った。
 けれど、そのしわだらけの口が悔しそうにゆがめたのを見逃さなかった。

 しかも、あったの。おばあさんの背中に、黒くて大きい悪魔の(しるし)が。

「あの店主、あやしいな。ターゲットなのか?」

 コソッと話すお父さん。黙っていると、おばあさんはポケットからなにか取り出して、手のひらの上で転がし始めた。

 あちこちから紫色の煙があらわれて、黒い石のようなものに吸い込まれていく。

 今のは、なんだったの?

 チラリとこっちを見て、おばあさんはニヤリと笑う。
 捕まえられるものなら、してみろ。そう挑発されているみたいだった。


「……あの人、悪魔だよ」

 ポツリと言う。放っておいたら、いけない気がしたから。

『天より生まれし(のろ)いの星よ、()き放て』

 中指についている指輪を前に出して、お父さんが呪文(じゅもん)をとなえる。その光はたちまちおばあさんを包み込んで、

『フィーニス!』

 跡形(あとかた)もなく消してしまった。