「二人だけで話がしたかったから、みんなの時間には少し待っててもらってるんだ。傷つけるようなことはしてないから、大丈夫だよ」

 みんなが人形みたいに動かないのは、やっぱり夜宮先輩の仕業なんだ。

 もしも、ネックレスを盗んだ男の子が、夜宮先輩だとしたら。七年前と、見た目が変わっていないのは普通じゃないよ。

「先輩って、一体……」

 何者なのか聞こうとしたとたん、おかしな物が目に映った。

 バサバサと、今にも羽ばたき出しそうな黒い翼が、キラキラとしながら夜宮先輩の背中に生えてきたの。
 なに……これ? ほんもの?

 目を丸くして黙って見ていると、わたしの視線に気付いたのか、夜宮先輩がシーッとくちびるの前で人差し指を立てて。

「このことは、誰にも話しちゃイケナイよ。僕たちだけの秘密」

 自分の小指に軽くくちびるを当てて、わたしの方へ差し出す。

 指切りってこと?
 よく分からないけど、夜宮先輩のこともっと知りたい。とつぜん、夢で見ていた理想の人が現れたんだもの。

 そっと小指を重ねると、キュッとからまって触れたところが熱を持つ。ほわんと赤く光って、小さく消えていった。

「ちかいの印。君と僕は今、仮の契約を結んだ」
「……えっ?」
「簡単に言えば、仮の恋人になったってこと。これからよろしくね、リリア」
「……えっ、ええ⁉︎」

 お昼と同じパチンという音がしたら、まわりの音が戻った。トーコちゃんも、何事もなかったように話している。

 なんだか、とてもすごいことが待ち受けている気がして、正体の知れないドキドキが止まらない。