「レイラ」

 コンコン、というノックと共に、ライアンが部屋に入る。

「アリア……綺麗だ……」

 ライアンの後ろにいたフレディがアリアを見るなり、呆けた顔で呟いた。

「レイラ、今日も綺麗だよ」
「ふふ、ありがと」

 そんなフレディを置き去りに、ライアンは真っ直ぐにレイラの元へと向かうと、彼女の手を取り、指にキスをした。

「アリーも素敵だね」
「あ、ありがとうございます……!」

 目の前で自然にイチャつくシュミット夫妻に、アリアは顔を赤くさせながらお礼を伝える。

「義兄上……」
「おっと、じゃあ会場でな」

 ジトリと睨むフレディに、ライアンはレイラの肩を寄せ、もう一方の手をひらひらとさせてみせた。

「アリー、君の功績を公にすることがようやく出来た。今まですまなかったね」

 部屋を出る手前で立ち止まると、ライアンはアリアに振り返り、頭を下げた。

「ライアン様っ!! 私はそれを承知で仕事を受けたのです! 感謝こそすれ、恨んでなどいません!」
「アリー……」

 ライアンに駆け寄り、叫んだアリアに、彼は頭を上げると、辛そうな表情をしていた。

「それに……私は、悪役令嬢のおかげでフレディ様に再会することが出来たのです。全て、ライアン様とレイラ様のおかげです」

 幸せそうに微笑むアリアに、ライアンとレイラも泣きそうな顔で微笑んだ。

「そうですよ。姉上と義兄上には感謝しています。今も、昔も……」
「フレディ……」

 フレディの言葉にレイラの目には涙が滲む。

「フレディもアリーちゃんも、やっと幸せになれたのよね……?」
「はい」

 フレディの返事に、レイラが満面の笑顔になる。

「これからも何かあれば力になる」

 レイラを抱き寄せ、ライアンも優しく微笑んで二人を見た。

「わ、私も、お二人の力に、なりたいです! 仕事じゃなくて……その……家族……として……」

 顔を赤くして、一生懸命言葉を発したアリアをフレディが抱きしめる。

「あ――、ダメだ、可愛すぎ」
「ほんとね。可愛すぎて心配だわ」

 レイラがフレディの上からアリアを抱きしめる。

「よし、俺たちで守っていこう」

 更にレイラの上からライアンが抱きしめる。

「?!?!」

 よくわからない状況にアリアは顔が赤くなったが、心は幸せに満ちていた。