扉が吹き飛び、ぽっかりと開いた隠し間の入口の穴からスティングが顔を覗かせる。

「スティング、遅いぞ」
「局長が早すぎるんですよ……」

 アリアを隠すように抱き締め、フレディは顔だけをスティングに向けた。

「失礼しますよっと……」
「何を――っ」

 スティングはマディオの側まで行くと、ひょいひょいっと縄で彼の身体を拘束した。

「おい! 俺にこんなことをして……っ、くそ、動けない?!」

 縛られたマディオは抵抗しようとしたが、その場でヘナヘナと座り込んでしまった。

「あ――、それ、魔導具の縄なんで、抵抗しようとしたら酷い目にあいますよ? って、遅かったか」

 カラッと笑顔で怖い事を言うスティングだったが、マディオは時すでに遅し、縄から走る電流に気を失っていた。

「おい……」

 フレディはコソコソとその場を去ろうとしていたローズに目線を向けると、未だ泣いているアリアを固く抱き締めたまま、声で威圧した。

 ローズはびくりと身体を震わせたが、すぐに甘い声と潤ませた瞳でフレディに駆け寄った。

「フレディ様っ……! 私、怖かった!!」
「は?」
「私もこの男に拘束されたんです……っ! 男遊びをしていたこの女には報いかもしれませんが、私は巻き込まれただけですわっ!!」

 わあっ、と大袈裟に泣いてみせるローズに、フレディは辟易とする。

「その割には、あなたは拘束もされず、衣服も綺麗な状態みたいですが?」

 ギロリと睨むフレディにローズはびくりと顔を上げる。泣いていたはずなのに、涙は流れていない。

「ちょ、ちょ、局長、一応、王族なんですから」

 止めに入ろうとしたスティングにローズは乗っかる。

「わ、私は王族ですもの! その男もさすがに私に縄をかけられなかったのですわ! それに、私に手を出そうとしたその男を誘惑しだしたのはその女ですわ」

 ビシッとアリアを指さすローズに、フレディの顔は増々険しくなる。隣でスティングがハラハラするほどに。

「……アリアは手を拘束され、ドレスまで引き裂かれているんだ……お前はそれを……」

 怒りに震えるフレディにローズは気付かずに続けた。

そういう(・・・・)趣味をお持ちなんでしょ? フレディ様、これでその悪女があなたに相応しくないとわかって――」
「うるさい!」