「……凄い?」
「はい! 凄いです!」
「……そっか」

 フレディなら庭師を紹介することだって出来た。でも何となく、この場に他の人間を入れたくなかった。

 魔法省の人間ですら近寄らない、この何もない庭を何故アリアが管理しているのかわからない。

 でもフレディは、この二人の空間を誰にも邪魔されたくない、と思った。

「ねえ、今研究してるんだけど、このバラたちの色を赤だけじゃなくて、色とりどりにしたら君はもっと喜ぶのかな?」
「え? そんなことが出来るんですか?!」

 フレディの話にアリアは目を輝かせた。

「ふふ、出来るよ。そうだな、君の瞳の色のアップルグリーンにだって」
「それは凄いですねえ……」

 想像をしてうっとりするアリアに、フレディの表情も緩む。

「ねえ、その薬が完成したら、ここを虹色のバラの庭園にしてあげるよ。その時は一緒に見てくれる?」
「良いんですか?!」

 窺うように言ったフレディの言葉に、アリアは嬉しそうに反応した。

「うん。約束……」

 アリアの笑顔に、フレディは穏やかに笑って言った。

 それからフレディは、アリアが管理する庭を時々訪れた。魔法の話やバラの話。他愛もないことを話し、一緒に庭を掃除した。

 すっかり元気になったバラを眺め、笑うアリアをフレディは温かい気持ちで見つめていた。

 アリアも、フレディが来てくれるのを期待するようになった。

 そしてある日、その日も庭掃除をしていたアリアは、フレディが来るのを期待していた。

 しかし訪れたのはフレディではなく、マディオだった。