「すごい! バラが元気になってます!」

 翌日、庭を訪れたフレディは、嬉しそうに微笑むアリアを見て、満足気に笑った。

 お礼をしたいので何でも言って欲しい、とアリアに言えば、返って来た返事は想像とは違うものだった。

『あ、ああああのじゃあ、ここのバラを元気な姿に戻したいので、庭師の方をご紹介いただけませんか?!』

 普通のご令嬢ならば宝石や、フレディとの食事を望むだろうに、アリアの望みはまったく違うものだった。望みと言っていいか疑問に思うほどだ。

 フレディはアリアと約束をして、今日この庭にやって来た。

 ただし、庭師ではなく、自身の開発した魔法薬を持って。

 その魔法薬をバラに与えると、萎れていたバラたちはみるみる元気になった。

「ありがとうございます、公爵様!」

(か、可愛っ……)

 元気になったバラたちを見渡し、アリアが満面な笑顔でお礼を言うと、フレディは顔を赤くして手で覆った。

「魔法って凄いですねえ」

 しみじみと言いながらバラを見つめるアリアにフレディはふっと笑う。

「これくらいの魔法薬なんて、凄くないよ。俺は……俺の魔法は、人を傷つけるから……」

 少し自嘲気味に言ったフレディは、アリアが目を見開いてこちらを見ているのに気付く。

(しまった、今のは失言だったか?)

 取り繕おうと口を開こうとしたフレディに、アリアが立ち上がる。

「いいえ、凄いです!! どうして良いかわからなくて、ただ見ていることしか出来なかった私に、公爵様は手を差し伸べてくれました! 傷付けるなんてとんでもない! バラを元気にしてくれました! 凄いです!」

 力いっぱい力説するアリアに、フレディの口元が緩む。