「あの殿下がアリアの汚名を晴らしてくれるなら願ったりだな」

 列を離れ、空いていたテーブルまでやって来る。

「あの、フレディ様……私は王都を去り、シュミット領でご厄介になりますので、今更そんな……」
「えっ?! 君は、このままで良いって言うの?!」

 申し訳無さそうに話すアリアに、フレディも流石に驚いた。

「いえ、あの……悪役令嬢としての仕事は内密の物でしたし、王家の問題でもあり、私の仕事も本当のことは表には出ない、とライアン様から伺っていましたので……」
「君は、それでも悪役令嬢の仕事を引き受けた、って言うの?」

 確かに王家が絡む複雑な問題だ。元々は王女に押し付けられた悪評を利用して、反逆者を炙り出した。

 その仕事は評価されこそすれ、表沙汰には出来ないことをフレディもわかっていた。

 それでも、悪く言われることを受け入れるアリアに、何とも言えない気持ちになる。

「アリア……」

 フレディが声をかけようとした時、二人の間に怒号が割って入った。

「アリア!! お前!!」
「お父、様……?」

 アリアを家から追い出した張本人、クラヴェル伯爵だった。