「アリア、綺麗だ……」
「あ、ありがとうございます……」

 ラピスラズリのような深い青に金糸で刺繍された見事なドレスに身を包んだアリアは、フレディの言葉に赤くなる。

(フ、フレディ様の礼装、初めて見たけどカッコイイ……)

 フレディはいつも魔法省に通う時は動きやすいシャツにパンツ、そして魔術師のローブを身に着けていた。

 それもそれで似合っていたが、今日はいつにも増してキラキラとしている。

 いつもは下ろされた前髪を後ろに撫でつけ、色気が増している。

「アリア?」
「ひゃ、ひゃいっっ!」
「緊張しているの? 大丈夫だよ。そうだこれ」

 フレディはアリアの首にチェーンを通す。

 チェーンの先には小さく可愛い小瓶が下がっている。ラピスラズリで出来たそれは、普通のネックレスに見えるが。

「お守り。中にはアリアの髪を変える魔法薬が入っているよ」
「あ、ありがとうございます!!」

 アリアはかけられたネックレスの小瓶をギュッと握りしめてお礼を言った。実は悪役令嬢に扮していなくて不安でいっぱいだったのだ。そんなアリアの気持ちに沿うようにネックレスを贈ってくれたフレディに胸が温かくなる。

 少しだけ緊張が解れたアリアの手をふわりと取ると、フレディは屋敷前の馬車までエスコートした。

 本日は、王太子殿下に招かれたお茶会である。