「だ、大丈夫ですか?!」

 音に驚いたスティングが慌てて席を立って駆けつける。

(あれ、痛くない――)

 高くないとはいえ、落ちたはずの身体が痛くなく、アリアはそろりと目を開いた。

「アリア、大丈夫?」
「フ、フレディ様っ!!」

 フレディがアリアを受け止め、かつ庇っていてくれた。

「も、申し訳ございません!! 私――っ」

 身体を起こし、泣きそうなアリアの頭をフレディの大きな手が覆う。

「アリアが何ともなくて良かった。君は俺の妻だからね。守るのは当然だよ」
「でも、それは……」
「アリア」

 契約なのに、と言おうとしたアリアの言葉をフレディが遮る。

「これを使いこなせるようになるまで俺も一緒に片付けようかな?」
「へっ?!」

 あどけない表情を見せたフレディにアリアの心臓が跳ね、涙が引っ込む。

「大丈夫そうですね? お二人とも」
「あ……」

 すっかり二人の世界だったが、心配して駆けつけたスティングが半目でこちらを見下ろしていた。

「ああ。俺はアリアがこれを使いこなせるまで一緒に片付けるから、お前は休憩にでも行ってこい」

 しっ、しっ、とフレディが手でスティングを追い払う。

「仕事はちゃんとしてくださいよ」

 はー、と口から大きな息を吐き出すと、スティングはそれだけ言って局長室を出て行ってしまった。

「あの、フレディ様?」

 恐る恐るアリアがフレディを見上げると、彼はにんまりと笑って言った。

「やっと二人きりだね、アリア」