「う、うーん……」

 机に集中していたフレディは、アリアのうめき声でハッとする。

「アリア、どうしたの?」

 フレディは立ち上がり、アリアがいる本棚まで行く。

「あ、あのっ、本をあそこに戻したくて……っ」

 アリアはもう少しで手が届きそうな一番上の棚に一生懸命本を差し入れようとしていた。

「可愛いなあ……」
「ふえっ?!」

 思わず溢したフレディに、アリアはぴやっと飛び上がる。

「局長……」

 自分の机で仕事をしていたスティングが顔だけ二人に向けて半目で見る。

「……アリア、これを使うと良いよ」

 コホン、と咳払いをし、フレディは本棚の直ぐ側にあった物を指し示す。

「これは?」

 丸い板に杖のような持ち手が付いている。アリアは何だろう?と首を傾げた。

「乗ってみて」

 フレディに言われるがまま、アリアはその板に両足を乗せた。

「ここにしっかり掴まっていてね?」

 フレディの説明にコクコクとアリアが頷き、杖にしっかりと掴まる。フレディはそれを確認すると、杖の脇にある石を握る。

「ひゃあ!」

 瞬間、その板は本棚の一番上まで手が届く位置までと浮かび上がる。アリアは驚きで声を上げた。

 目の前に戻そうとしていた棚が現れ、手にしていた本を戻す。

「じゃあアリア、さっき俺が触った場所に触れて見て。杖からは手を離さずにね!」
「は、はいっ!」

 魔法具により浮かび上がったアリアの視線は、フレディと同じ位置にあった。

(う、うわわ!!)

 キスだって何度かしたのに、改めて間近に顔を見ると恥ずかしくなる。

「アリア?」
「は、はいっ!!」

 そんなアリアの様子に気付かないフレディが声をかけると、アリアは急いで石を握る。

「アリア!!」
「へっ……――――っっ!!」

 慌てていたアリアは杖から手を離していて、板がゆっくりと下に下がるも、バランスを崩してしまった。

(お、落ちる――)

 キュッと目をつぶったと同時にドスンと大きな音を立ててアリアは落ちた。