フレディの母が亡くなったのは彼が15歳の時だった。

 幼い頃から婚約者と仲睦まじかった姉のレイラの花嫁姿を楽しみにしていたのに、それは叶わなかった。

 フレディは魔力量の高さから将来を有望視されており、ローレン公爵家も安泰だと言われていた。

 父が再婚相手であるどこぞの令嬢を連れてきたのは母が亡くなってまだ一年の頃だった。

 姉もライアンに嫁ぎ、寂しくなった家に新しい義母がやって来たことは父にとっても良いのだろう、とフレディは思った。

 自身ももうすぐ魔術学院に通うし、父を支えられるように義母と助け合っていこうとさえ思っていた。

 しかし、その日は突然やって来た。

 仕事で父の帰りが遅いその日、使用人たちも寝静まり返った頃、義母が自分の部屋へとやって来たのだ。

 魔術学院に向けて毎日予習をしていたフレディは、その日の夜も起きて机に向かっていた。

 ナイトドレス姿で現れた義母にどうしたのかと心配を向けた。

「……義母上……? どうされたのですか?」

 義母は父と十五も離れていたが、若い令嬢が後妻として地位の高い貴族の家に嫁ぐことは珍しくなかった。

 俯いて後ろ手で部屋の扉を締めた義母にフレディは近付いた。

 近付いたフレディの身体を義母はベッドに押し倒すと、無理やりキスをしてきた。

「――っ! 義母上、何を?!」

 驚いて見上げた義母は、女の顔をしてこちらを見ていた。

「ああ……やっぱり、若い方がいいわ。王家特有の金色の髪は艶があって綺麗だし、その精悍な整った顔……」

 ふふふ、と妖しく笑う義母は、魔物のように恐ろしく感じた。

「ねえ、二人だけの秘密……。これからもっと良い事、しましょう?」