そんな二人を見ていたスティングの声でアリアはハッとする。

(スティングさんがいたんでした!! どうしましょう?!)

 リアのまま甘やかされるアリアは慌ててフレディを見たが、彼は涼しい顔をしていた。

「愛人なんて、不潔です!! 見損ないましたよ、局長!!」
「は?」
「いくら悪女に骨抜きにされたと悪い噂が流れているとはいえ、潔癖な局長にやっと真実の相手が現れたんだと、俺、嬉しかったのに!!」
「おい、スティング……」
「局長のバカ!」

 フレディが説明しようとするも、スティングは言いたい事だけ言うと、局長室を飛び出して行ってしまった。

「ど、どうしましょう……」

 フレディの膝の上に固定されて身動き取れないアリアは、スティングが出て行った方向を見ながら、困ったように言った。

「どうもこうも……」

 呆れたように同じ方向を見ていたフレディだったが、すぐにアリアに向き直る。

「俺が触れられるのはアリアだけなんだから」

 熱を込めた瞳でアリアの頬に手を置くフレディ。

「く、薬は一人限定なんですね!!」

 ぴゃっ、となりながらも目を明後日の方向に向けてアリアが言う。

「まだ薬のせいだと思っていたのか……」

 眉間にシワを寄せて、フレディがアリアを見つめる。

「あ、あのフレディ様……?」

 近すぎる顔に、アリアの心臓が保たない。

「じゃあ、薬の出来を確認してね? アリア」
「へっ……」

 フレディは意地悪な表情を見せたかと思うと、目を細め、アリアに顔を寄せて、口付けた。

「ふあっ!」

 急な口付けにアリアの心臓が飛び出そうになる。

(く、くくく薬の効果の確認のため!!)

 自分に必死にそう言い聞かせるも、甘く長い時間にアリアはまたもや何も考えられなくなる。

 やっと開放された頃には、トロンとした表情でぼーっとするアリアがいた。

「やばい……。職場でこれは……」
「へっ……」

 アリアの表情を見て、片手で顔を覆ったフレディが呟く言葉をアリアはぼーっと聞いていると、すぐに口を塞がれてしまった。

「むっ、ふううう……」

 息が苦しい。

(フ、フレディ様、薬の効果の持続を確認して?!)

 再び落とされた唇に、アリアは酔いそうになりながら必死に仕事のことを考えた。

 仕事なのに心地よいフレディの熱に、どんどん溶かされていく。

(わ、私……こんなのでフレディ様のお役に立てているんでしょうか?)

 フレディにとっての自分の存在意義を改めて考える。

「アリア……」

 そんなアリアの考えを見透かしたようにフレディが覗き込む。

「今は、俺のことだけ考えて」
「フレディ様……」

 再びフレディの熱がアリアの唇を塞いだ。

(そんなこと……許されるんでしょうか?)

 仕事なのに、と思うのに、気付けばアリアの頭の中はフレディのことでいっぱいだった。