「アリア?!」
「ご、めんなさ……い……。嬉しくて……」

 慌てて起き上がったフレディにアリアは肩を支えられる。

「悪役令嬢としてライアン様のお仕事を達成出来て、私は自分が誇らしかった。だから、フレディ様にもそんな風に言ってもらえて……嬉しいです」

 泣きながらも微笑むアリアを、フレディは引き寄せて抱き締めた。

「まったく、君は……」
「フレディ様?」
「悪女と呼ばれて喜ぶなんて、君だけだよ」

 抱き締めたアリアから身を離し、フレディは真剣な瞳で覗き込む。

「君は、君のままでも充分素敵だってこと、もっとわかって欲しい」
「フレディ様?」
「君は悪役令嬢じゃなくたって、充分価値のある人間なんだよ」

 フレディの言葉がアリアの心に染み渡る。

(私に、価値がある……?)

 信じられない、といった表情でフレディを見れば、彼は笑みを深めて言った。

「信じられない、って顔に書いてあるね? 良いよ、今は仕事だと思ったまま甘やかされていて。アリア自身に価値があること、俺がわからせてみせるから」
「そんなこと……」

 あるんでしょうか?と言いかけて、やめた。

 悪役令嬢になることでしか自分の価値を見出だせなかったアリアは、目の前の真剣なフレディの瞳に甘えたくなった。

(こんなこと、仕事相手に思っちゃいけない……わかっているのに……)

 自分に言い聞かせるようにするアリアだったが、この言葉だけはどうしてもフレディの演技だとは思えなかった。