「フレディ様? おモテになるのだから、私が毎日追い払いに来ましょうか?」
「――――っ!」

 ギュッと腕に絡みつくアリアに、フレディは身を固くした。

 嫌ではない。嫌では無いが、悪役令嬢・アリアになった途端、「リア」の時と違いすぎて、戸惑う。

「かっけー……」

 それを見ていたスティングが思わず漏らす。

「あら、フレディ様の助手のスティング様ですね?」
「え……何で名前……」

 アリアに名前を呼ばれ、驚くスティングに、アリアはフレディの腕から離れ、ゆっくりと近付く。

「フレディ様のことは何でも知っているのよ?」

 唇に人差し指を当て、にっこりと妖艶に微笑むアリアに、スティングはドキリとしてしまう。

 男を取っ替え引っ替えな悪女と言われているが、なるほど、こんなに美人ならば可能だ、とスティングは思った。

「今後とも、夫共々よろしくお願いいたしますわ」

 顔を近すぎるくらい寄せ、微笑むアリアに、スティングは顔を赤らめる。

「アリア!」

 そんなアリアを腰を寄せてスティングから離すフレディ。

「あら、フレディ様。嫉妬、ですか?」
「!! いいから、来るんだ!」

 フレディはアリアの腕を引っ張ると、局長室を勢いよく出て行った。

「はー、あれが、噂の局長の奥さんかあ。局長を骨抜きにさせるはずだわ……」

 残されたスティングは、一人、納得しながら、食べかけのサンドイッチに再び手を伸ばしたのだった。