アリアの背中を見つめながら、フレディは少しだけ面白くない、と思った。

 フレディは自身の執務室にベンとサーナ、アリアを入れた。念のため、屋敷にいたメイドたちも全員帰した。

「さて……なぜ君がメイドのような真似事をしているんだ?」
「す、すすすすすみません」

 フレディがアリアに視線をやると、アリアは俯き、どもる。

「聞きたいのはこちらの方です、フレディ様」
「何?」

 二人の間にサーナが割って入る。

「契約結婚だなんて馬鹿げたこと、どうしてお決めになったのです」

 サーナの言葉にフレディはベンを見た。ベンは困ったように微笑んで、頭を下げた。

 サーナがこの契約結婚を反対することはわかっていた。だからこそ、ベンにしか話していなかったというのに。

「あの悪名高いご令嬢と結婚を決められたかと思ったら……」

 サーラは溜息混じりに小言を漏らした。

「これは義兄上と姉上も関わっていることだ。彼女も仕事として来たんだ」

 アリアの悪名は作られたもので、彼女自身は悪女じゃない、と説明しようとした所でサーラに遮られる。

「こんな、素直で良いお嬢さんを傷物にするなんて! あなたたち姉弟は何をお考えです!!」