何度、辛い思いをしたんだろう。


 わたしが声が出なくなったり、ピアノが弾けなくなったり、事故に遭った時も、さっきのように過呼吸になった時もきっととてつもない不安に襲われたはずだ。


 その証拠にわたしが目覚めた時、いつもお母さんは泣いている。



「もう大丈夫だからね。お母さんがいるから。紗那は一人じゃないよ」



 わんわん、と泣きじゃくるわたしをなだめるように優しい声でそう言うお母さん。


 わたしはこんなにも優しさで溢れた人たちを疑ってしまっていたんだ。


 その罪悪感がわたしに重くのしかかってくる。


 ちゃんと話さなきゃ。わたしの気持ちを。
 想くんだってそうしたほうがいいって言うに決まってる。