男の子はわたしにキラキラの笑顔を向けて手を振るとそのまま逃げるように去っていった。



「あ、こら!待ちなさい!」



 小嶋さんはそう言いながらも逃げる彼を追いかけることはせずにわたしの隣で呆れたようにため息をこぼした。


 追いかけなくてよかったのかな?

 それにしても看護師の小嶋さんから逃げるなんて何があったんだろう。

 検査とかが嫌とか?いや、でもそれはちょっと子供すぎるかな?



「もうほんとにあの子ったら……」



 小さくなっていく背中を見つめながら小嶋さんはぽつりと呟いた。



【大変そうですね】



 曖昧に笑いながらそう打った画面を見せると小嶋さんは大きく頷いた。