【いえ、わたしのほうこそすみません】
スマホの画面を見せると男の子は「ううん、俺の方こそ邪魔しちゃってごめんね」ともう一度謝ってくれた。
彼は何にも悪くないのに。
きっと、わたしがピアノを触っていたから弾くのかと思ったんだ。
【大丈夫です!わたし、ピアノは弾けないので】
そう打ち込んだ画面を少しおどけたように笑いながら見せた。
初対面の男の子を困らせるわけないはいかない。
こうやって冗談っぽく笑えば、軽く聞こえるだろうし。
「そっか。君のピアノの音、聴いてみたかったんだけどなあ」
彼は少し残念そうに唇をぴゅっと尖らせた。