懐かしいな……もうピアノから離れて一ヶ月も経つんだ。


 一ヶ月前までは視界に映すのも嫌だったのに今は少し落ち着いたのか視界に入っても大丈夫だった。


 これなら弾けるかもしれない。


 そう思ったわたしは白い鍵盤に指をそっと置いた。


 すると、脳内に思い出したくもない記憶が走馬灯のように次々フラッシュバックしてきて、はあっはあっと息が乱れていく。鍵盤に触れている指も情けないほど小刻みに震えている。


 ダメだ……やっぱりわたしはもうピアノなんて弾けない。

 これ以上は無理だと体が言っている。


 やめておこう。

 そう思ったわたしは鍵盤から指を離した。



「大丈夫?」