わたしが奏でる音で誰かを笑顔にすることもできない。
家族を喜ばせることもできない。
どうして、どうしてこんなことになってしまったんだろう。
ピアノをやめて、声が出なくなっていたわたしに待っていたのは先の見えない絶望だけだった。
わたしは想くんみたいにキラキラしたものを持っていない。
手に持っている折り紙に力が入り、綺麗だった紙がぐしゃりと歪む。
―――コンコンコンッ
そんな時だった。
わたしの病室の扉が誰かによって軽く叩かれた。
「は、はい!」
わたしは急いで持っていた折り紙を枕の下に隠した。
返事はまだ間に合う。
紙飛行機でやり取りする中で想くんと決めたルールは3つ。