だけど、わたしはみんなを裏切りたくなくて必死になって鍵盤を叩いて機械のように音を奏で続けた。
最初は鍵盤を叩くのが気持ちよくて、ピアノを弾いているだけで幸せだった。
それなのにいつからかわたしにとって好きだったピアノが重荷になっていたことに気が付いた時にはもう手遅れで、声が出なくなったのと同時にわたしはピアノを、鍵盤を弾くことができなくなった。
手が言うことを聞かずにずっと震えてしまう。
ピアノの前に座ると、嫌な記憶がフラッシュバックしてきて強烈な吐き気に襲われて座っていられなくなる。
だから、わたしは大好きだったはずのピアノをやめた。
今のわたしには何にもない。