「また話せるようになったのは想くんのおかげだよ」



 涙でぐしゃぐしゃの顔でとびきりの笑顔を想くんに向ける。

 想くんがいなかったらわたしはもう一度声を出すことはできなかった。



「紗那ちゃんが、笑ってくれて……嬉しいなぁ」



 ゆっくりとした動作で想くんがわたしの手に自分の手を重ねた。


 突然のことに驚きながらもわたしはそれに応えるように想くんの手の上にもう片方の自分の手を置いてぎゅっと優しく握った。


 わたしは、この手の感覚を、優しく包み込むようなあたたかい体温を、生涯忘れることはないだろう。