想くんだとは知らずに会ってたことはあるけど。
「今からでも大丈夫ですか?」
お兄さんが指で涙を拭いながらそう言った。
い、今から……!?
でも、想くんに会えるなら早い方がいいか!
【わかりました。ちょっとだけ待ってください!】
お兄さんにそう打ち込んだ画面を見せて、急いでポーチから鏡とクシとピンク色のリップを取り出した。
想くんに会うんだからちょっとでも可愛くして行かなきゃ!
前まではどすっぴんのボサボサ頭で会ってしまっていたけど、正体がわかったなら可愛くしていくに越したことはない。
腰まで伸びた髪をクシですぅっと梳いて、折りたたみ式の鏡を開いて前髪を整える。