「弟は病気になってから好きだったサッカーもできなくなって、人が変わったように無口になって、口を開けば家族や看護師さんに暴言を吐く日々でした。きっと現実が受け入れらなかったんでしょう」



 わたしが知っている想くんからは想像もできない話だった。


 でも、突然自分の好きだったことができなくなったことや当たり前が当たり前でなくなった絶望は果てしないものだったんだろうな。


 わたしにもその気持ちは何となくわかるから。



「でも、ある日を境に想はいつもみたいに明るくなったんです。何があったのかは知らないけどきっと音瀬さんとやり取りし出してから弟は元気を取り戻していたんだと思うんです」