【なんで空になりたいの?】



 わたしは風上くんの肩をトントンと叩いてスマホの画面を見せた。



「空は自由だと思わない?なんか無限の可能性を感じるんだよ」



 夜空に手を伸ばしながら瞳をキラキラさせている風上くん。


 その声は心なしか弾んで聞こえる。

 本当に空が好きなんだろうな。



「それに空になったらさ、紗那ちゃんがいつどこで泣いててもわかるだろ」



 わたしを優しく見つめたまま、彼の硝子玉のような瞳がすぅっと柔らかく弧を描いた。


 その刹那、ばくんばくんとわたしの鼓動が早鐘を打ち始める。


 そんな優しい顔で微笑まれたらドキドキしないわけがない。

 風上くんはズルい。



【な、なにそれ!】