だけど、いつまで経っても痛みは襲ってこなくて、その代わりわたしの両頬に温かい手が添えられた。
恐る恐る目を開けるとそこには柔らかく目を細めたお母さんがいた。
「あのね、紗那。お母さんは紗那がいてくれるだけで嬉しいの。そりゃあ、声が出るほうが紗那だって生活しやすいだろうし、ピアノも紗那が楽しそうに弾いてたから弾けた方がいいんだろうけど……そんなこと正直どうだっていいのよ」
……え?
お母さんの言葉にわたしは大きく目を見開いた。
まさか、どうだっていいなんて言われると思ってなかったから。
そして、お母さんはそのまま言葉を続ける。