――――――…暗闇の向こうから、誰かが私を呼んでいた。

「…い、しっかりしろ。シルナ・エインリー。起きろって」

「…う…。は、つね…?」

「…残念だったな。外れだ」

…え。

重い瞼を開けると、そこにいたのは。

「…大丈夫か?」

「え…あ、ジュリス君…」

ジュリス君が、私に向かって手を差し伸べていてくれた。

「立てるか?」

「だ、大丈夫。ありが…。…ひえっ!?」

「お、おい?」

その時私は、自分が「何」の上に尻餅をついていたかに気づいて、思わず素っ頓狂な声が出た。

骨だ。

無数の骨が、泥だらけの地面の上にそのまま捨てられていた。

何、ここ?

骨踏んじゃってた。ごめんなさい。

慌てて飛び起きて、地面に散らばった無数の骨を見下ろした。

「な、何これ…?」

お魚さんの骨…だったら、まだ良かったんだけど。

この骨の大きさ…。どう見ても、人間の…、

「ふぇっ…!だ、誰のか分からないけど、骨踏んづけちゃった。ごめんなさい…!」

「…おい。落ち着けって」

「ごめんなさいごめんなさい、わざとじゃないんです!呪わないでくださいーっ!」

「おい、大丈夫だって」

え?

「ここは冥界なんだぞ。冥界に人間はいない。つまり、人間の骨じゃない」

「…あっ…」

そういえば…そうだった。

ということは、これは人骨ではなく、魔物の骨…?

…魔物の骨だとしても、踏んづけちゃってごめんなさい。

「そ、そっか…。良かっ…。って、ひぇっ…!?」

地面から顔を上げて、周囲の景色が目に入るなり。

私は、再び悲鳴をあげることになった。