…と、思ったのだが。

この謎の遺跡跡地から脱出するのは、予想以上に困難を極めた。

「…うーん。ここも行き止まりだね」

「…あぁ…」

駄目だな。こっちも行き止まり…。

じゃあ次は道を変えて、別のルートで…。

…歩いた、つもりだったのだが。

「ここも行き止まりか…」

「じゃあ、あっちの道を通ってみる?」

「そうだな」

こっちも駄目なら…と、ベリクリーデが指差した道を通って。

しばらく、そのまま歩いてみたが…。

「…ねぇ」

「…何だ?ベリクリーデ」

「…ここ、さっき通らなかった?」

…奇遇だな。

俺も今、同じことを考えていたところだ。

何処もかしこも崩れて、真っ直ぐ進むだけでも足を取られるのに。

何の目印もなく、あてもなくぐるぐると同じ場所を歩き回っていた。

似たような景色がずっと続いているせいで、景色に新鮮味が全然ない。

「迷子だね」

「…迷子だな…」

紛うことなく、迷子だ。

嘘だろ…?冥界を彷徨う覚悟はしてたけど、まさか最初に辿り着いた遺跡から出ることさえ叶わないなんて…。

方向音痴にも程がある。

「どうする?何か、目印になるものでも…」

ベタだけど、壁に傷でもつけるか。

すると、ベリクリーデが。

「それなら、さっき拾ったキノコを目印に落としておこう」

ヘンゼルとグレーテルみたいな発想だな。

あれは小石であって、キノコじゃないけど…。

目印代わりになるなら、石でもパン屑でもキノコでも、何でも良いよ。

「…それにしても…」

俺は、半分崩れかかった壁に、そっと手を触れた。

「どうしたの?」

「いや…。これ、何か彫ってあるように見えたから…」

手のひらで、壁のススを払うと。

その下から、崩れかかった石板みたいな…不思議な模様が彫ってあるのが分かった。

やっぱり。

「ピラミッドみたいだな…」

「何?ぴらみっとって」

「何って言われても…。昔の人が残した遺跡みたいな…」

ピラミッドかどうかは分からないよ?冥界にピラミッドがあるなんて、聞いたことないし。

でも、似たような何かなんじゃないだろうか。

ピラミッドっていうのは、昔の人のお墓なんだろう?

ってことは、ここは誰かの墓なのか?

この壁に彫ってある模様は?絵なのか、それとも文字なのか…。

「これ、なんて書いてあるんだろうな…?」

「うーん…。昔の人の言葉かな?分かんないね。ジュリスだったら分かったかなぁ」

「そうだな…。シルナとかだったら、無駄に物知りだから、分かったかも…」

もしかしてここに、物凄く重要な情報が彫ってあったりしない?

だとしたら、俺達、相当勿体ないことしてるよな…。

でも、読めないものは仕方ない。

「とにかく、まずはここを出て…。シルナやジュリスを見つけたら、ここに連れてきて見てもらおうか…」

解読してくれたら良いんだけど…。って言うか、まずは合流出来たら良いんだけど。

もしかして、このままこのピラミッド(?)から、一生出られなかったりして…。

…あぁ、駄目だ。やめとこう。そういうことを考えるものじゃない。

それなのに、そんな俺の心配をよそに。

「あ、見て。この先は、まだ行ったことないよ」

「あ、ちょっ…待てって」

ベリクリーデは好奇心の赴くまま、瓦礫を掻き分けてどんどん進んでいった。

仕方なく、俺はそんなベリクリーデの後ろを追いかけた。