ベリクリーデの容態を確認しようと、抱き起こしてみたら。

凄く間抜けそうな…ベリクリーデの…。

…寝息、らしきものが聞こえてきたんだけど。

これって気の所為なのかなぁ。

気の所為じゃないよなぁ。…多分…。

「…なぁ、ベリクリーデ。起きろ」

俺は、もう一度ベリクリーデを揺すってみた。

しかし、寝ぼけ娘は目を覚まさない。

「ふにゃ…。むにゃむにゃ…。じゅりす〜…そこはらめ〜…」

寝息のみならず、寝言まで。

なんつー夢を見てるんだ?ジュリスへの風評被害やめろ。

「俺はジュリスじゃない。良いから起きろって。こんなところで寝るな!」

耳元でそう叫ぶと、突然。

全く起きる気配のなかったベリクリーデが、ぱちっと目を開けた。

お、おぉ。

あまりに突然起きたものだから、起こした本人である俺もびっくりしてしまった。

「…?ジュリス…?」

きょとん、と首を傾げるベリクリーデ。

「…悪いな。俺はジュリスじゃない」

ジュリスだったら良かったんだけどな。

「…ジュリスじゃない…」

「そうだ。俺の名前知ってるよな?羽久だ。羽久・グラスフィア…」

「…羽久…」

ベリクリーデは俺の名前を復唱して、ぽやんとした表情でこちらを見つめていた。

…寝起き一発目に俺の顔で、本当ごめんな。

ベリクリーデだって、俺じゃなくてジュリスが良かっただろうに。

でも、仲間の一人に会えて良かった。

「無事で良かった。安心したよ、ベリクリーデ…」

一人じゃないことの頼もしさ。心強さよ。

「…羽久…。…ジュリスは?」

ごめんな。答えてあげられたら良かったんだけど…。

「分からない。俺もシルナと離れ離れになってるんだ…」

「そっか…」

「ベリクリーデも、ジュリスとは別の場所に飛ばされたんだな…」

「うん。一緒だったはずなのに」

分かるよ。俺とシルナもそうだったから。

ってことは、少なくとも俺とシルナ、ジュリスとベリクリーデの二組は、既にペア崩壊してることになるな。

初っ端からこれか…。心折れそうだな。

でも、ベリクリーデだけでも見つけられて良かった。

少なくとも、単独行動はせずに済む。

こうなったからには…臨機応変に考えなければならないだろう。

「ベリクリーデ。提案なんだが…」

「ジュリス、元気かな…」

うん。心配なのは分かるけど、俺の話を聞いてくれ。

「多分、この近くに俺達の相棒はいない。シルナもジュリスも、『門』を潜った時にはぐれてしまったみたいだ」

「うん」

「そこで、なんだが…。お互いの相棒が見つかるまで、俺達で組まないか?」

何の運命の悪戯か、お互い、相棒とは違う相手と同じ場所に飛ばされてしまった。

だったら、単独行動を取るよりは、現地で即席のペアを作る方が良いだろう。

「組む?…羽久と?」

「あぁ。即席のペアだが…。一人で行動するよりはマシだと思うんだ」

「…そっかー…」

「お互いの相棒が見つかるまで。一緒に協力して欲しい。どうだ?」

「うーん。良いよ」

意外とあっさり。

ジュリスじゃないと嫌、って言われたらどうしようかと思った。