こうして俺達は、未知の世界…冥界へと足を踏み入れた。






しかし、予想外の事態は思っていたよりずっと早く…冥界に飛び込んだ瞬間に訪れた。

『門』潜った直後、奇妙な寒気や熱気、身体にまとわりつくような不気味な感覚に襲われた。

それだけなら、まだ何ということもなかった。

だが、その時…確かに、しっかり繋いでいたはずの手が。

シルナと繋いでいた手が、するりと解けるように離れた。

「…!」

力を抜いた訳じゃない。絶対に離れ離れにならないよう、しっかり手を繋ぎ合っていたはずなのに。

目に見えない力に、無理矢理引っ張られるかの如く…。

呆気なく、俺はシルナと引き離された。

これは、さすがにシルナも予想外だったのだろう。

驚愕に目を見開いていた。

「…!シルナ…!」

「羽久…!」

暗闇の中で、シルナは今一度、俺に向かって手を伸ばした。

俺はその手を取ろうと、必死に腕を伸ばして…。

…しかし、その手が再び届くことはなかった。

強い引力に引っ張られて、俺はシルナと真反対の場所に投げ出された。

抗うことは出来なかった。ただ、目の中に飛び込んでくる強い光に、反射的にぎゅっと目を閉じた。