――――――…準備は出来た。 

あとは、いざ、冥界への旅に出発するだけである。

この先何が待ち受けているのか、内心ハラハラしながら、

「えーと、こっちがチョコレートバー…。こっちがチョコビスケット…」

…。

なんか呑気な声が聞こえてきたので、振り向いてみると。

シルナが、リュックサックにチョコレートを詰めていた。

…何やってんの?

こいつは見なかったことにしよう。

「よし。準備出来た」

「何かお土産になるようなもの、見つけられたら良いねー」

令月とすぐりは、二人共お揃いの風呂敷包みを身体に巻き付けていた。

…遠足感覚?

「お前ら、それ…その風呂敷何?」

「これ?暗殺非常用持ち出し袋」

「『アメノミコト』時代から使ってる優れものだよー」

「へぇ…」

何が入ってるの、と聞いてみたかったが。

絶対ろくなもの入ってないから、敢えて聞かないでおこう。

「ジュリス、見て見てー。おやつにね、うんまい棒買ってきたよ」

「何でそんなもん買ってきたんだよ…。遊びに行くんじゃないんだぞ」

「うんまい棒のね、サルミアッキ味」

「本当に何でそんなもん買ってきたんだよ…!?」

…買ってくる方も買ってくる方だが、売る方もよくそんなもん売ってたな。

ネタか?ネタなのか?

一方、キュレムとルイーシュはと言うと。

「キュレムさん、ペプシとコーラどっちが良いですか?」

「どっちでも良いわ、そんなん…。似たようなもんだろ」

「分かりました。じゃあコーヒー牛乳にしますねー」

「それは全然違うもんだろ!?」

…こっちも呑気してんな。

残りのメンバーと言ったら…。

「えーと、包帯と消毒液、解熱剤…。念の為に、体温計とピンセットも入れて…」

「よしっ。天音さんが他所を向いてる隙に…風船ガム入れておこうっと」

「あぁっ…。ちょっと、ナジュ君。救急箱にガムを入れちゃ…」

「グミも入れておこーっと」

「ナジュ君っ…!」

…。

…なぁ。

これから、魑魅魍魎が跋扈する恐ろしい冥界への旅に出ようっていうのに。

何で、遠足の前夜みたいな雰囲気になってんの?