――――――…現世でも、冥界でもない場所。

天国でも地獄でも、あの世でもない。

断絶空間ともまた違う、世界の何処でもない時空の狭間。

いつの間にか、僕はそこにいた。

「…」

ここは何処なのだろう。何でこんなところにいるんだろうと考えて。

そして、思い出した。

…そうだ、僕は死んだのだ。

あの日、あの夜、イーニシュフェルト魔導学院の園芸部の畑で…。

心臓に剣を刺されて…殺された。

だから、僕はここにいるのだ。

あの世でもこの世でもない、時空の狭間に。

僕は自分の身体を見下ろして、そして自嘲気味に笑った。

だって、笑わずにいられようか。

全く情けない話じゃないか。

生きている間も、散々化け物だの、半端者だのと罵られて…。

この世にお前の居場所などないと、口癖のように言われて…。

ようやく死んで、名実共にこの世の生き物ではなくなって…。

やっと死んで解放されたはずなのに、化け物である僕は、あの世にさえ行けない。

化け物の居場所なんて、この世にも、あの世にもないんだ。

だから、死んでも他の人のように、あの世には行けない。

安らかに眠ることなんて、僕には許されない。

こうして、世界の何処でもない場所を…魂だけの存在になって、永遠に彷徨い続けるしかないのだ。

…お似合いじゃないか。僕には。

もう良い。全て、どうでも良い。

だって、もう何もかも終わったのだから。

僕はもう何処にも行けない。何も出来ない。何もかも、もう終わってしまったのだ。

後悔はなかった。裏切りの半端者には、相応しい末路だ。

…ただ一つ、悲しいことがあるとしたら。

ようやく、僕も死んで解放されたというのに…。

あの世に行けない僕は、死者の世界でさえも、「彼女」に再会することは出来ない。

…それだけが、悲しかった。

…いや、それだけじゃないな。

同じくらい…もっと悲しいことが、他にも…。

でも、もう全部終わった。

どれだけ悔しくても、悲しくても、…寂しくても。

僕に出来ることは、もう何もない。

ここで、永遠に彷徨い続けるだけ。永遠に、一人で…。




「…本当にそう?」