マシュリの心臓を取り戻しに行くことで、頭がいっぱいになっていたけれど。

確かに、ジュリスの言う通りだ。

マシュリを殺した犯人は、神竜族だと思い込んでいた。

動機はあるし、それにエリュティアの探索魔法に引っ掛からなかったから。

つまり、犯人は魔物であると思い込んでいた…けれど。

ここに来て、神竜族は犯人ではないことが分かった。

神竜族は、マシュリの心臓が6つしかないことを知っているのだから。

マシュリの身体に、7本もの剣を突き刺す必要がないことを知っている。

それなのに、マシュリを殺した凶器は7本…。

犯人はマシュリが神竜バハムートの血を引いていることを知っていて、でも心臓を一つ没収されていることは知らなかった。

神竜族じゃない、他の誰かの犯行なんだ。

…でも、誰が…?

「…」

「…」

俺達は、お互いに酷で顔を見合わせた。

…皆目検討もつかない。

何せ俺はずっと、犯人は神竜族だと思い込んでいたから…。

…マシュリは一体、誰に殺されたんだ?

何の為に…?

「…こうなったら、マシュリ君本人に聞いてみるしかないね」

シルナが沈黙を破った。

…そうだな。

それが一番手っ取り早くて、確実な方法だろう。

マシュリを助けに行く必要性が、これでまた一つ増えたな。

「真犯人を見つける為にも、何としてもマシュリ君を生き返らせよう」

「あぁ」

犯人のことは気になるけれど、こちらはひとまず後回しだ。

まずは、マシュリを助けに行かないと…。

「で、俺らがわざわざここに集められた理由は何なワケ?」

キュレムが尋ねた。

…それは…。

「まさか…嬉し楽しい冥界遠征に、一緒についていくメンバーを決める為…とかじゃないよなぁ学院長?」

「ぎくっ…」

「…やっぱりそうなのかよ…」

…ごめんな。キュレム。

お前の予想通りなんだよ。実は。

嬉しくも楽しくもないけどな。

本当は、俺やシルナやイレース達、イーニシュフェルト魔導学院の面々だけで冥界遠征に行こうと思っていたのだが…。

さすがに今回は、これまでの異世界旅行とは訳が違う。

それぞれの適性や役割を考えて、慎重に決めなければならない。

その為に、シュニィの許可を得て、聖魔騎士団魔導部隊の面々に声をかけさせてもらった。

「ごめんね。君達を危険な目に遭わせることは望んでない。本当は…私達だけで、全て解決出来たらそれが一番良かったんだけど…」

「…」

「今回は…いや、今回も、だね…。私達だけじゃ手に余る。勝手なことを言ってるのは分かってるよ。でも、もし良かったら協力してもらえないかな」

「…」

「この通り。お願いします」

シルナはそう言って、キュレムや他の魔導部隊大隊長の前で頭を下げた。

…シルナ…。