翌日。

改めて、聖魔騎士団から魔導部隊の大隊長達を呼び。

昨夜ナジュに聞かされた、マシュリの秘密について話した。

これには、一同びっくり。

「マジかよ。心臓が…7つ?やべーな」

「どうやら魔物の身体は、人間のそれとは大きく異なっているようですね」

キュレムが言い、クュルナが続けて言った。

あぁ。俺も驚いたよ。

マシュリはそんなこと、自分からは一言も言わなかったもんな。

「それで、さっき話した通りマシュリ君の最後の心臓は、冥界にある竜の祠という場所にある。それを探しに行く為に…」

昨夜と違って、今日の話し合いのまとめ役はシルナである。

一通り事情を説明して、いざ本題に入ろうとしたその時。

「ちょっと待て。あんたら、大事なこと忘れてないか」

と、ストップをかける者がいた。

ジュリスである。

「…?ジュリス君、大事なことって…?」

「マシュリを殺した犯人のことだよ」

…犯人…。

…あっ。

ジュリスに指摘されてようやく、俺もそのことに気がついた。

「…??ジュリス、何のこと?」

ジュリスの隣にいたベリクリーデが、きょとんと首を傾げた。

ベリクリーデはまだ気づいていないらしい。

「マシュリが生まれた時に、7つ目の心臓を没収したのは神竜族なんだろ?つまり神竜族は、今のマシュリの身体には、6つしか心臓がないことを知ってるんだ」

「ほぇー」

「それなのに、マシュリの遺体に刺さっていた剣は7本。…これがどういうことか分かるか?」

「ほぇー」

…どうやら分かってないな。ベリクリーデは。

そんなベリクリーデに、ジュリスは懇切丁寧に説明してやった。

「…あのな、だから。犯人はマシュリが神竜バハムートだってことを知ってた。だから、当然身体の中には心臓が7つあるものと思ってた。だから、7本の剣で心臓を貫いたんだ」

「うん」

「だけど実際は、マシュリには心臓が6つしかない。一つ没収されてるからな。で、マシュリの心臓が一つ没収されていることを知っているのは、没収した当人である神竜族だけなんだ」

「うん」

「これっておかしいと思わないか?俺達は、マシュリ殺害の犯人が、神竜族だと思ってた。…殺害現場に、探索魔法で多辿れる『痕跡』が残ってなかったから」

『痕跡』が残ってない=魔物の犯行。

魔物の犯行=マシュリを恨む神竜族の仕業。

…だと、ずっと思い込んでいた。

だけど、今や…その推測は的外れだったことが分かった。

「犯人は、マシュリが神竜族だと知っていた。でも、心臓が6つしかないことは知らなかったんだ」

「うん」

「もし犯人が神竜族なら、剣は6本だったはずだ。それなのに、剣は7本刺さってた。つまり、犯人は神竜族じゃない、他の誰かの犯行だってことだ」

「うん」

「…分かったか?ベリクリーデ」

この上なく、丁寧に説明してやったが。

ベリクリーデの反応はと言うと。

「…ほぇー」

…だった。

…駄目だ。分かってないな、これは。

「…俺はこれ以上、どうやって分かりやすく説明すればお前に分かってもらえるのか分からないよ…」

ま、まぁまぁ。ジュリス。

大丈夫だ、俺達にはちゃんと伝わってたから。