「マシュリさんの7つ目の心臓を取り返しに行くリスクについては説明しました。…その上で、皆さんはどうしますか?」

…にわかには、返事が出来ないな。

冥界に赴くリスク…。神竜族以下、冥界の魔物と敵対するリスク…。

生きて戻れる保証はない。

それに何より…マシュリは、俺達がそんなリスクを犯すことを望んでいない。

マシュリの意志に反して、これだけのリスクを犯す覚悟が、俺にあるだろうか?

「…」

恐らく、ここにいる皆が俺と同じことを考えているのだろう。

…マシュリは言った。人間とケルベロスの血を引く自分は、神竜バハムートの血を引く自分の姿は、罪の姿だと。

これ以上、自分の罪で誰かの未来を奪いたくないと。

明るい未来を見た。かつて、マシュリの恋人が見たという、明るい未来を生きていくはずだった。

…俺達と共に。

己の罪を受け入れ、克服し、前を向いて、未来を生きることを誓った。

これからマシュリには、希望に溢れた幸福な未来が待っているはずだった。

誰にも、その未来を奪う権利などない。

これまでずっと虐げられ、孤独と罪の意識に苛まれて生きてきたマシュリが。

こんな風に未来を奪われ、二度と陽の目を見ることが出来ないなんて…。

…二度と、マシュリに会えないなんて。

…そんなのは嫌だ。

冥界に行くリスクとか、死ぬかもしれないっていう恐怖より。

それ以上に、ただ、俺は。

「…諦めたくない。マシュリに、もう一度会うことを」

もう一度会って、そして一緒に生きていたい。

これからもずっと、マシュリの見る幸福な未来を、傍で一緒に見ていきたい。

それが、俺の本心だった。