ナジュ以外の面々は全員、驚いて目を見開いていた。

「6つ…?6つしかないってどういうことだ?」

たった今、マシュリには心臓が7つあるって言ったじゃないか。

今度は6つ?どういうこと?

話についていけなくなってきた。

「だったら、もう一度説明しましょうか。マシュリさんの身体には、元々心臓が7つありました。しかしマシュリさんが殺された時、彼の身体の中には心臓は6つしかない状態だったんです」

ごめん。もう一回説明されても分かんねぇや。

「もうちょっと理解力、何とかしてくださいよ」

呆れたように一言。

うるせぇ。お前、自分は全部知ってるからって偉そうに。

「6つしかないって…。それなら、残りのもう一つは何処に?マシュリさんの身体の中にはないんですか?」

と、シュニィが尋ねた。

「はい。これは、昔リリスがマシュリさんに聞いた話だそうですが…。マシュリさんが冥界で生まれた時のことです。神竜バハムートの皆さんは、彼ら曰く『罪の姿』で生まれたマシュリさんを許しませんでした」

「…」

何が神竜だ。何が『罪の姿』だ。

心の狭い奴ら。

そいつらのせいで、マシュリは生まれてこの方、ずっと自分の出自に負い目を感じて、苦しみ続けることに…。

「本当は、生まれてすぐにマシュリさんは処刑されるところだった…。しかしマシュリさんは結局殺されず、その代わりに…」

「心臓を一つ、奪われたということですね」

「その通りです。シュニィさんは察しが良いですね。羽久さんと違って」

うるせぇ。

「こうして、生まれてすぐ、マシュリさんは7つある心臓のうち一つを奪われ、身体の中には心臓は6つしかない状態で、これまで生きてきたんです」

「…じゃあ、あの7本の剣は…」

「確かに心臓を貫いたあの剣は、マシュリさんの身体の6つの心臓を破壊しました。でも、7本目の剣は、あれは空振りです」

…空振り…。

犯人は、マシュリが神竜族だから、当然心臓が7つあると思って、7本の剣を刺したけど。

その推測は的外れで、実はマシュリには6つしか心臓はなかった

つまり、7本目の剣は必要なかった。…元々マシュリには、7つ目の心臓が存在しないのだから。

…いや、存在はしているのか。

ただ、生まれた時に竜族の仲間に奪われただけで…。

…ようやく、話が見えてきた。

「理解してもらえましたか」

「あぁ…。つまり、希望はその7つ目の心臓なんだな。生まれた時は持ってたけど、生まれてすぐ神竜族に奪われた、最後の心臓…」

「その通りです。その最後の心臓がマシュリさんの身体に戻れば、マシュリさんは生き返ることが出来る」

…成程。

ナジュが「諦めるのはまだ早い」と言った意味が分かった。

そういうことなら、確かに諦めるのは早いな。

お葬式をして、火葬して、お墓を作って…なんて考えていた頃を思い出して、寒気がした。

あぶねぇ。早まって葬式しなくて良かった。

いくら7つ目の心臓が手に入っても、戻るべき肉体が灰になっていたら、さすがに再生は不可能だ。

ようやく少し希望が見えてきて、安心した。

でも…まだ問題は残っている。

大きな問題が。