凄く…今、凄く重要なことを言われのは分かるんだけど。

冥界?心臓?…最後の?

頭の中、疑問符でいっぱい。

「皆さん、動揺しているようですね」

「…動揺してるのが分かってるんなら、詳しく話してくれよ」

さすがに説明不足だろ。誰でも分からんわ。そりゃ。

「リリス曰く、元々マシュリさんには、心臓が7つあるんだそうです」

「7つ…!?」

…そんなにあるの?

心臓なんて、普通一つの身体に一つだけだろ。

すると、博識なシュニィがハッとしたように言った。

「そういえば…聞いたことがあります。冥界の生き物の中には、心臓や脳、その他臓器を複数所持しているものもいると…」

「マジかよ。じゃあ、マシュリも…?」

「私も聞いたことがあるよ。竜族には心臓が7つあるって…。やっぱり、マシュリ君もそうだったんだね」

シルナまで。

「お前…知ってたのか?」

「知ってたよ。でも、マシュリ君は竜族である前に人間だから。本人に聞いたことはなかったけど…」

…そうだよな。

マシュリ本人には、なかなか聞きづらい。

「お前、神竜族とケルベロスと人間の血が混ざってるけど、心臓は一つなのか?それとも7つあるのか?」なんて。

…でも、今思えば、聞いておくべきだったのかもな。

こんなことになると知っていたら…。

「あぁ、成程ねー。あの剣はそういう意味だったんだ」

「何かの象徴かと思ってたけど、ただ心臓を潰しただけだったんだね」

すぐりと令月が、何かに納得していた。

「剣って…?」

「マシュリさんに突き刺さっていた、7本の剣のことでしょう」

「あっ…」

イレースに指摘されて、ようやく理解した。

そうだった。マシュリの遺体に刺さっていた…7本の剣。

人を殺すだけなら、凶器なんて一つで充分なのに。

それでも、7本もの剣をマシュリの身体に突き刺して残酷な殺し方をしたのは、きっと見せしめの為だろうと思っていた。

神竜族を裏切ったらこうなるんだぞ、と思い知らせる為に。

しかし…ナジュの話が本当なら、あの7本の剣の意味合いは違ってくる。

あの剣は、マシュリの身体の中の心臓に突き刺さっていたのだ。

心臓を一つ一つ…破壊する為に。

「7つある心臓のうち、一つでも生きていれば、肉体がどれだけ破壊されていようが、他の6つの心臓が潰されていようが、再生することが出来るそうです」

と、ナジュが説明してくれた。

マシュリの驚異的な再生能力は、そういうカラクリだったのか。

命の予備が6つあるようなものだな。

…でも、7つの心臓を全て破壊されてしまったら…。

「…マシュリが心臓をたくさん持ってるのは分かったよ。で、それがどうして、『諦めるのはまだ早い』ことになるんだ?」

意味ないだろ。…今更、そんなこと知ったって。

マシュリがいくら、7つも心臓を持っていたって。

7本の剣で、それぞれ全ての心臓を貫かれ、破壊されていた。

7つ全て壊されたら、もう再生は出来ない。…滅びるだけだ。

「まぁ、そう落ち込まないでくださいよ。肝心なのはここからなんです」

「…何だよ?」

「マシュリさんには、心臓が7つある…。それは確かです。しかし、元々マシュリさんの身体の中には、心臓は6つしかないんです」

…え?