「捕まえましたよ」

「な、な、何?どうしたの?ナジュ君」

「あまりにもリリスが頑固なので…。僕もちょっと本気を出そうかと思いまして」

「ほ、本気って何っ?」

…さぁ、何でしょうね。

ただ一つ分かるのは、あなたは僕を本気にさせたということです。

恨むなら、自分の頑固な態度を恨むことですね。

「…マシュリさんが何を望んでるかなんて、承知の上ですよ」

マシュリさんは今頃、自分のことは諦めてくれと言ってるのだろう。

むしろ、犠牲が自分だけで済んで良かった、とまで思っていそうだ。

…認めてなるものか。

マシュリさんが何を望んでいようと、そんなことは関係ない。

「これは全て、僕の為です。このままじゃ僕が納得出来ないから、真実を知りたいんです。黙って見ていることなんて、出来るはずないじゃないですか…!」

死者の望みなど、知ったことか。

ただ僕は、このままじゃ納得出来ない。出来るはずがない。

仲間が何者かに殺されたのに、「真相は知らない方が良い」と言われて、はいそうですかと納得出来るものか。

例え、知った後死ぬほど後悔することになったとしても。

知らずに、死ぬほど後悔し続けるよりマシだ。

「殺されたんですよ。仲間が。マシュリさんが…!何でじっとしていられるですか」

「それは…!でも…駄目なんだよ。ナジュ君が危険な目に…」

それが真実を知る為に必要な代償なら、喜んで払おう。

理屈じゃない。理性なんて働かない。

ただ、僕は。

「知りたいんです。仲間の身に何があったのか…。誰かの為じゃなく、自分が納得する為に。そうしないと…僕は、一生マシュリさんの死を乗り越えることなんて出来ないから」

再び前を向く為に。

マシュリさんのことを思い出す時、後ろめたい気持ちにならないように。

あの時何かしてあげられることがあれば、と後悔しないように。

「だ、だけど…ナジュ君…」

なおも躊躇うリリスの両腕を掴んだまま、僕は必死に訴えた。

珍しく、我ながら真剣な顔をして…いや、僕はいつも真剣に生きてますけどね。

じゃあ今度は僕からリリスに、トドメの一撃だ。

「これがもし、僕だったら」

「えっ…」

「死んだのが、僕だったとしたら…今のように黙っていることを良しとしましたか」

「…!」

…そんなはずはありませんよね。

言わなくても分かることだ。

「…ズルいよ、ナジュ君…。それはズルい…」

「…済みません。ズルい男で」

でも、僕も形振り構っていられないんです。

現状、リリス以外に頼れる手掛かりが何一つないので。

ズルい男にならせてもらいますよ。…今だけはね。

「駄目なんだよ、ナジュ君…。物凄く危険なの。人間が手を触れちゃいけない領域が…」

「そうですか。僕は怖くありませんよ。…永遠に終わることのない苦しみに比べたら、二度とあなたに触れられない苦しみに比べたら、どうってことはないです」

「…あぁ、もう…」

済みませんね。聞き分けがなくて。

リリスを困らせたくはないんですが。…仕方ないですね。今回ばかりは。