その後、夜が明けるのを待って。

俺達は、聖魔騎士団に連絡を入れた。

連絡を受けた聖魔騎士団魔導部隊の面々は、すぐさまイーニシュフェルト魔導学院にすっ飛んできた。

やって来たのは、シュニィとアトラス、エリュティア、それから無闇の四人だった。

「学院長先生…!本当なのですか。マシュリさんが…!」

シュニィは血相を変えて、シルナに掴み掛からんばかりに尋ねた。

「…」

シルナは無言で、沈鬱な表情で俯いた。

シルナ以外の面々も、似たような表情だ。

その表情が、全てを物語っていた。

「…そんな…」

突然の悲報に、シュニィも俺と同じように、身体から力が抜けたらしい。

その場に崩れ落ちそうになるのを、彼女の夫であるアトラスが支えてあげていた。

「嘘です…。マシュリさんが、そんな…」

「…」

嘘だと言ってあげられたら、どんなに良かっただろう。

シュニィとマシュリは、俺達以上に親交が深かった。

元々は、ナツキ皇王の命令を受けたマシュリが、シュニィを拉致、監禁したことがきっかけだったのだが…。

その時、マシュリはシュニィに説得され、改心したという経緯がある。

マシュリが学院で暮らすようになってからも、時折、シュニィに招かれてルシェリート宅を訪れていた。

特に、シュニィとアトラスの愛娘、アイナに気に入られたらしく。

マシュリの特別な能力、『変化』を見せてもらっては、大喜びしていたとか。

『変化』を見て怖がるのではなく、嬉々として喜んでいるあたり、さすがアトラスの子といったところか。

シュニィにとってマシュリは、ただの知り合い以上の関係だった。

そんなマシュリが…変わり果てた姿になって、心を揺り動かされないはずがない。

だからこそ、連絡を受けてすぐ、自らが学院に足を運んだのだ。

何かの間違いであって欲しい、と願いながら。

…分かるよ。その気持ちは。

俺だって同じだったから。

だけど…どれほど夢であって欲しい、間違いであって欲しいと願っても。

現実は変えられない。残酷な現実は。

「…遺体を見せてもらうことは出来るか?」

無闇が、遠慮がちにそう頼んできた。

エリュティアと無闇は、泣き崩れることはなかったが、こちらの二人も沈鬱な表情だった。

「勿論だ。…空き教室にいる。ついてきてくれ」

俺は聖魔騎士団から来た四人を連れて、マシュリのもとに連れて行った。

シュニィは見ない方が良いかもしれないと思ったが、シュニィは断固として、自分もこの目で見なければならないと言い張った。

…分かった。

せめて、最後のお別れくらいはしてやってくれ。

マシュリも多分…シュニィに会いたかっただろうから。

「…ここだ」

「…!マシュリさん…」

シュニィは、マシュリの傍に駆け寄った。

跪いて、マシュリの手を取って涙を流した。

「どうして。マシュリさん…目を開けてください。どうしてっ…こんな、こんなところで…!」

激しく泣きじゃくり、嗚咽を漏らすシュニィの肩を、アトラスは無言で抱き締めた。

…アトラスが来てくれてて良かったな。

泣きじゃくるシュニィを見ていると、こっちまで貰い泣きしてしまいそうになる。