憶測が憶測を呼び、どんどん話が不穏な方向に向かっている気がする。

どうするのが正解なのか、それは誰にも分からない。

ただ一つ分かるのは…令月達が言ったように、決して二人目の犠牲者を出してはいけないということ。

その為に出来ることは、何でもやらなければならない。

それだけははっきりしている。

話し合いが暗礁に乗り上げかけたところで、シルナが別の提案をした。

「聖魔騎士団の皆に連絡して、学院に来てもらおう」

…聖魔騎士団に…。

…まぁ、そうしてもらった方が良いよな。

正直、もう俺達の手に負えない。

未だに、全部夢だったら良いのに、って思ってるくらいなのに。

「その方が良いでしょうね。再び襲撃者が現れないとも限りませんし。人手は多い方が良いでしょう」

イレースも賛成。

俺も賛成だよ。

襲撃者が神竜族だとしても、ナツキ様の手の者だろうと、他の誰かだろうと。

マシュリを圧倒するほどの実力を持っているのなら、こちらも普段以上の戦力を整えなければならない。

…これ以上、俺達から何も奪わせない為に。

もっと早く、そうしていれば…。

マシュリは、死なずに済んだかもしれないのに。

「…マシュリ…」

俺は、両目を固く閉じたマシュリの顔を見下ろしながら、彼の名前を呟いた。

「…ごめんな」

仲間なのに。俺達は…お前を助けることが出来なかった。

辛かったろう。一人ぼっちで息絶える瞬間、とても痛くて、怖くて…孤独だっただろう。

その時のマシュリの苦痛を想像しただけで、気が狂いそうになる。

同時に、そんなマシュリを助けることが出来なかった自分に腹が立つ。

「…羽久、大丈夫?」

俺の心の内を見透かしたように、シルナが声をかけてきた。

…それはこっちの台詞だ。

俺でさえ、責任を感じて、酷く自分を責めているのに…。

恐らくこの中で、一番責任を感じて、自分を責めているであろうシルナを。

…支えてあげられるのは、俺だけだ。

だから、俺が弱音を吐き、シルナに甘える訳にはいかない。

「…大丈夫だ。『二人目』だけは、絶対に出させない」

「…うん、そうだね」

そして、ただ一人犠牲になってくれたマシュリの仇を討つ。

それが、せめてものマシュリへの手向けだった。