「…」

「…」

「…」

再び、俺達の間に沈黙が流れた。

殺したいほどマシュリに恨みを抱いているのは誰か、について考えるより。

マシュリをあれほど一方的に殺せるのは誰か、を考えた方が、犯人は絞れそうだな。

考えられるのは…。やはり…。

「…竜か?あの時、マシュリを断罪しようとした神竜族の長…」

それ以外、思いつかない。

マシュリを殺したい奴、マシュリを殺せる奴なんて。

一度は俺達の抵抗を受けて、冥界に引っ込んでいったけど。

当然ながら、マシュリを許すつもりはないようだった。

俺達が見ていない隙を狙って、マシュリに裁きを下そうと…。

「まー、順当に考えればそーなるね」

「忌々しいですが、そう考えるのが一番しっくり来ますね」

…だよな。

案外姑息なことをするじゃないか。

マシュリの味方をする、俺達のことも許さないとか言っておきながら…。

結局、俺達が見てない間を狙って、こっそりとマシュリを暗殺するような真似を…。

「…」

しかし、この推理に納得していない者もいた。

「…天音、何か言いたそうだな」

「あ、うん…」

「この際だ。思ってることは何でも言ってくれ」

どんな意見も、マシュリを殺した犯人に繋がる手掛かりとなる。

「マシュリさんの仲間…神竜族の魔物達が犯人だとしても…マシュリさんが無抵抗で殺される…とは思えなくて…」

「…それは…」

「それに…マシュリさんにはその…身体に剣が突き刺さって亡くなってたんだよね?…神竜族が、剣なんて使うのかな…」

「…あ…」

そうだ。マシュリをやった…凶器のことを忘れていた。

剣が刺さってた。しかも7本も…ってことは。

犯人は、剣を使う相手だった…ってことじゃないか?

「僕も、神竜族が犯人だとは思えませんね」

天音に続いて、ナジュも…神竜族犯人論に否定的な意見だった。

「あの気位の高い神竜族が、こそこそとマシュリさんの不意をつく…なんてみみっちいことをするでしょうか。やるなら正面から挑んで、力で捻じ伏せる…。それが誇り高き(笑)神竜バハムートでしょう」

(笑)をつけるなって。

成程、そういう意見もあるか…。一理ある。

「でも、そうなると…他に誰がマシュリを…」

各方面に敵が多いからな。俺達。

誰に狙われてもおかしくはないけど、でもマシュリを一方的に圧倒することが出来る者と言えば…。

「…もしかしたら、これが」

シルナが、重い口を開いた。

「ナツキ様の用意した…『次の矢』なのかもしれない」

…マシュリを殺すことが?

有り得ない話ではない。

ナツキ様にとって、マシュリは裏切り者に等しい存在。

そのマシュリを、かくも残酷に殺害することで…自分の権威を証明しようとしているのかもしれない。

…成程、そういう考えもあるな。