アーリヤット皇国の皇宮で会ったきりだな。

「チョコ…フォンデュですか。ふむ…。成程、様々な具材に溶かしたチョコレートをつけながら食べる料理…」

リューイは、何もない空間から取り出した本を開き、ペラペラと捲っていた。

その本って、そんなこと書いてあんの?

広辞苑かよ。

「マシュマロやフルーツをつけて食べるのが一般的…。ですが、聖賢者殿が食べているのは…」

「チョコにつけたチョコ美味し〜!」

満面笑みで、チョコがけチョコを頬張るシルナ。

…何だろう。何故か俺がすげー恥ずかしい。

「…チョコレートにチョコレートをつけるとは…。聖賢者殿は上級者ですね」

「…ただチョコ狂いなだけだよ…」

「お土産にと思って、ルーデュニア聖王国王室御用達洋菓子店のショコラ・ケーキを持参したのですが、どうやら必要なかったよ、」

「えっ、ショコラ・ケーキ!?」

普段はお耳が遠い癖に、チョコに関することだけは、超地獄耳。

さっきまで、うきうきでフォンデュ食ってたのに、ショコラケーキに飛びついてきた。

「はい。どうですか」

「喜んでいただきます!ありがとうリューイ君!」

「それは良かったです」

チョコフォンデュも食って、ショコラ・ケーキも食べるのか。

一体どんだけ食うんだ…。食い過ぎだろ、チョコ。

「やったー!羽久、見て見て。リューイ君にケーキもらった。羽久も一緒に食べよー」

「はいはい…。良かったな…」

全く…。リューイまでシルナに甘く、しかも餌付けする奴が増えたら、ますますシルナのチョコ狂いが加速し、

…ん?

その時、俺はとんでもないことに気がついた。

「…リューイ…?」

「…?どうかしましたか、時魔導師殿」

「…お前、何でここにいんのっ!?」

物凄くナチュラルに会話に参加してきたものだから、俺も全然何の気なしに喋ってたけど。

何なら、シルナまでショコラ・ケーキの誘惑に気を取られて、いつの間にかリューイが来ていることに気づいてない。

「わーい。ショコラ・ケーキ〜♪」

今に至っても、シルナはリューイの存在に気づいていない。

駄目だ。あいつの頭の中は今、チョコレートでいっぱい。

「…今気づいたのですか?」

「あぁ…。今気づいた」

恥ずかしいことに。

「大丈夫ですよ。別に大した用事ではありませんから」

「大した用事じゃないって…。じゃあ、どんな用事なんだ?」

「あの後、智天使様と共に天界に帰って、熾天使様と座天使様のお二人と話し合いを行いましたので、その結果をお話ししに来ました」

…何が、「大した用事じゃない」って?

めちゃくちゃ重要なことじゃないかよ。







…それはともすれば、これからの俺達の行く末を左右するような。

















END