時魔法なんか使ってないのに、時が止まったようだった。

…ちょ、なん…何なんだ?いきなり。

俺、もしかしてまだ眠ったままなんじゃないか?

タチの悪い夢を…悪夢を見ているだけで…。

目を覚ましたら、いつも通りの朝を迎えることが出来るんじゃないか、と。

…儚い、無意味な望みを抱いて、現実逃避したくなった。

令月の言葉の意味を咀嚼し、そして令月が何を言っているのか理解して、頭から血の気が引いた。

いつの間にか、眠気は完全に吹っ飛んでいた。

「な…何言ってるんだ…?」

冗談だろう。令月にしては…悪質な冗談。

…しかし。

「夢でも冗談でもないよ。…本当のことなんだ」

令月は、現実を受け入れたくない俺を諭すように、そう言った。

当たり前だ。少し考えれば分かること。

令月が、わざわざ眠っている俺を起こしに来てまで、こんな悪質な冗談を口にするはずがない。

生きること、死ぬことの重みを、誰よりよく知ってるような奴らなのだから。

…本気なんだ。夢じゃないんだ。本当に。

マシュリが…。

「な、何で…。何でそんなことになってるんだ?マシュリは何処に…」

「僕にも分からない。誰かに襲われたんだと思う。校舎の巡回中に、園芸部の畑から…血の匂いがして、駆けつけてみたら…」

「…」

「…そこに、マシュリの死体を見つけた」

…そんな。

「マシュリが…マシュリが死ぬ訳ない…」

何かの間違いだ。あのマシュリが。

まだ、仲間になったばかりなのに。ようやく自分の罪を否定して、前に進めるようになったばかりなのに。

これから…一緒に、楽しいことも辛いことも分け合って、一緒に生きていくはずだったのに。

こんなところで…何の前触れも何もなく…いきなり、終わるなんて。

「…ついてきて。見せてあげるから」

なおも信じられない俺に向かって、令月がそう言った。

何を、とは聞くまでもなかった。

令月達が見つけたという、マシュリの…。

…マシュリの、亡骸を。