…結局、チョコフォンデュパーティーの準備を手伝わされてしまうことになった一行。

俺は、フォンデュの具材を乗せた大皿を、次々にテーブルの上に運んだ。

スイーツビュッフェみたいだな…。

それは良いんだけど…。この、フォンデュの具材…。

「シルナ…これ何なんだ?」

「えっ?美味しそうでしょ?」

そりゃまぁ…美味しそうではあるけども…。

マシュマロ、オレンジ、イチゴ、バナナ、キウイやぶどう…などの、定番具材は勿論。

一口大にカットしたフランスパンやメロンパン、クロワッサン、チョココロネなんかのパン類も豊富。

…フランスパンやクロワッサンは分かるけど、チョコフォンデュにチョココロネ…?

チョコクッキーやチョコシュークリーム、チョコアイスなんかもある。

…チョコにチョコかけんの?

チーズとかポテトチップスとか、ちょっと塩気のある食べ物も、申し訳程度に用意されていたけど…。

野菜系の具材は、全く用意されていない。

甘くない食べ物は食べないという、主催者の強い意志を感じる。

しかし。

「園芸部の畑で採れた野菜、こっそり混ぜとこーっと」

「お裾分けだね」

園芸部の元暗殺者が、畑で採れた野菜をこっそり、大皿に乗せて並べてくれた。

ナイス。良い仕事したぞお前ら。

ピーマンとかゴーヤとか、およそチョコフォンデュには相応しくなさそうな野菜も混じってるけど。

あれは…見なかったことにしよう。

更に。

「えっと…。学院長先生…。これは…?」 

俺と同じく大皿を運んでいた天音が、大皿の上に乗った具材を見て、怪訝そうな顔をしていた。

何だ…?あれ。

もしかして…。

「チョコだよ」

シルナはドヤ顔で答えた。

…それは見たら分かるんだけど。

普通の、大粒のチョコレートである。

「アーモンドチョコと、チョコプラリネと、ストロベリーチョコとー」

「あぁ、はい。それは分かりますけど…。チョコフォンデュパーティーなのに、何で普通のチョコが…?」

「え?チョコレートをチョコでフォンデュしたら美味しいかなと思って」

「…」

チョコフォンデュの具材がチョコレートって。どういうことだよ。

チョコにチョコかけて食べんの?

「美味しいものに美味しいものをつけて食べるんだから、きっと美味しいに決まってるよ!」

「あ、え、えぇと、そ、そうですか…」

天音、はっきり言って良いんだぞ。

チョコにチョコかけて食うアホがいるか!って。

…冷たいのチョコの上に、熱く、溶けたチョコレートをかけて食べる…。

…うん。想像しただけで気持ち悪い。

しかし、うっきうきで具材の用意をするシルナ相手に、今は何を言っても無駄であった。