「君は、自分がその時正しいと思ったことをしただけ…。皆そうだよ。皆、自分が正しいと信じたことを行う。それが正しい人の在り方だから」

「ですが…私は、あなたに酷く辛い思いを…」

「辛い思いなんかしてないよ。…仲間が助けに来てくれたから」

マシュリは、俺達の方を見て言った。

「彼らが、僕の大切なものを取り返しに行ってくれた。恐ろしいほどの危険を冒して…。そのお陰で僕は、迷いなく彼らの為に戦うことが出来るようになったんだ」

「…」

「だから、君を恨んでなんかいない。僕に申し訳ないと思う気持ちがあるなら、金輪際、もう僕らに手出ししないで欲しい。それだけだよ」

「…はい、分かりました…。ありがとうございます」

智天使ケルビムは、マシュリの寛容さに驚いているようだった。

…まぁ、そうなるわな。

自分が殺した相手に、「恨んでいない」なんて言われたら。

でも、マシュリはそういう奴だ。

…それに。

「礼を言うのは、俺達じゃなくてこいつじゃないのか」

俺は、もう一人の天使の方を手で指して言った。

…ここまで、ずっと一緒に戦ってくれた。俺達の味方をしてくれた。

智天使ケルビムの忠実な下僕。

「…リューイ…」

「…智天使様…」

リューイにとっては、感動の再会だろうな。

天界に捕らわれていた自分の主を、ようやく取り戻した…。

「…そうですね。まずは何を置いても、あなたにお礼を言わなければならないでしょう」

あぁ。そうしてやってくれ。

「ありがとう、リューイ。私を助けてくれて…。そして、私の代わりに彼らを助けてくれて…」

「そんな…。…礼には及びません。私は、私の使命を果たしただけで…」

「いいえ。私が今、こうしてこの場に立っていられるのはあなたのお陰なのです。いつもいつも、あなたに助けられてばかりで…。…今回も、また助けられてしまいましたね」

「…」

「いつも私の傍に居てくれて…私の味方でいてくれてありがとうございます、リューイ」

「…勿体無いお言葉です」

そう言って、リューイはケルビムの前に跪いた。

その手を、ケルビムはそっと包み込むように握った。

「これからも、私の傍に…私の力になってくれますか?」

「…あなたが、そうお望みなら」

リューイの返事に、ケルビムは嬉しそうに微笑んだ。

…リューイがご主人様と再会出来て、本当に良かった。

俺とシルナは、この光景を見て互いに安堵した。